はじめに ― 見えているのに見えていないもの
私たちは日々、膨大な情報と出来事の中で生きています。
駅のホームでスマホを見ながら立っている人。スーパーの野菜売り場で値札を見比べる人。
どれも何気ない風景ですが、あなたはその中にどれほどの「情報」を見つけられるでしょうか?
多くの場合、目に入っているはずのものを「見ていない」状態になっています。
原因は単純です。脳は効率化のために、大部分の情報を無意識に捨ててしまうからです。
そこで登場するのが、「?EYE現象観察技術」。
これは「問いの視点(?)」と「観察する眼(EYE)」を組み合わせ、日常の現象を“情報資源”に変えるための観察メソッドです。
この技術を身につけると、当たり前の風景が研究素材になり、日々が学びと発想の宝庫に変わります。
1.?EYE現象観察技術とは
定義
「?EYE現象観察技術」とは、日常の出来事や現象を、
①問い(Question)を持ちながら
②多角的に観察(Eye)し、
③背景やパターンを抽出することで
④新しい意味や行動のヒントに変える技術です。
これはQECCメソッドの最初のQとEの部分を強化した技法とも言えます。
2.観察が「現象観察技術」に変わる3つのステップ
ステップ1:問いを持って観察する
ただ「見る」だけでは、情報は通り過ぎていきます。
たとえばカフェに入った時、「なぜこの席だけ埋まっているのか?」と問いを持つだけで、視界の情報は変わります。
BGMの音量、光の入り方、コンセントの有無、椅子の座り心地…
問いがフィルターとなって、観察対象が際立ってくるのです。
問いの例
- なぜこの人はこの行動を選んだのか?
- この現象はいつ・どこで・どのように起きるのか?
- 他の場所や時間ではどう変化するか?
ステップ2:多角的に観察する
問いを持ったら、単一の視点でなく、複数のレンズで観察します。
例えば「混んでいるカフェ席」の理由を探る場合、
- 空間的視点:レイアウト、動線、距離感
- 時間的視点:時間帯による変化、曜日差
- 感覚的視点:音、匂い、光、温度
- 人間行動視点:利用者の年齢層、姿勢、会話の内容
こうすることで、現象は立体的に浮かび上がります。
ステップ3:背景やパターンを抽出する
観察した断片的な情報をつなぎ合わせ、「なぜそうなるのか」の仮説を立てます。
この仮説は正解である必要はありません。重要なのは、現象を一歩深く理解しようとするプロセスです。
やがて、同じような現象が起きる条件やパターンが見えてきます。
例:
「駅前のAカフェは平日の午後だけ混む」→「近くの専門学校の授業終わりと重なる」→「学生割引の存在が来店動機になっている」
3.?EYE現象観察技術がもたらす3つの効果
① 情報の質が変わる
ただの「風景」や「出来事」が、行動の根拠となるデータに変わります。
これはビジネスやクリエイティブの発想源になります。
② 思考が柔軟になる
複数視点での観察は、思考の固定化を防ぎます。
「こうに違いない」という思い込みが外れ、異なる可能性を探る習慣が身につきます。
③ 発想の再現性が高まる
観察と仮説化のプロセスを繰り返すことで、「なぜそうなるか」を説明できる力がつきます。
これは偶然のひらめきではなく、再現可能な発想力です。
4.実践トレーニング ― 今日からできる3つの方法
方法1:1日1現象ルール
毎日1つ、「なぜ?」と問いたくなる現象を見つけて記録します。
メモアプリやノートに、「現象」「観察」「仮説」の3項目で書き出すと続けやすいです。
方法2:視点フィルターチャレンジ
同じ現象を5つの視点(空間/時間/感覚/行動/関係性)で観察してみます。
例えば「雨の日のコンビニ」を観察すると、傘立ての位置、入店客の服装、床の濡れ具合、商品の売れ筋変化など、多くの発見が出てきます。
方法3:現象パターン地図づくり
一定期間観察した現象を整理して、「共通する条件」や「発生パターン」を地図のように描きます。
これにより、新しい場面でも応用可能な“現象辞典”ができます。
5.ビジネス・教育・クリエイティブでの応用例
- ビジネス:店舗の混雑パターン分析、顧客行動の背景理解、新商品の販売タイミング設定
- 教育:生徒の反応の変化を観察し、授業改善に反映
- クリエイティブ:日常現象から物語やデザインのアイデアを発掘
6.観察から行動へ ― QECCメソッドとの接続
QECCメソッドでは、
- Q(Question):問いを立てる
- E(Eye):観察する
- C(Create):新しい意味や解決案を作る
- C(Change):実際に変化を起こす
「?EYE現象観察技術」は、QとEを強化することで、CとCの質を格段に高めます。
つまり、観察力は行動力の源泉です。
おわりに ― 観察は世界の見え方を変える
私たちは「見ているようで見ていない」時間を多く過ごしています。
?EYE現象観察技術は、その無意識のフィルターを外し、日常を学びと発想のフィールドに変える方法です。
今日からでもできます。
カフェで、駅で、教室で――
ひとつ「なぜ?」を持って世界を眺めてみてください。
そこから見える景色は、きっと昨日とは違って見えるはずです。
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